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子どもの脳を傷つける「マルトリートメント」とは?

関連書籍:NHK出版新書 523 子どもの脳を傷つける親たち
公開日:2018年12月20日
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 あなたは「マルトリートメント」という言葉をご存じですか。

「虐待」とほぼ同義ですが、加害意図のあるなしにかかわらず、子どものこころと身体の健全な成長を阻む、不適切なかかわりを指します。

「悪い・悪く」という意味の接頭語(mal)+扱い(treatment)
= 不適切な養育(maltreatment)

「虐待」と聞くと、多くの人が「自分の子育てには関係のないこと」だと考えるはずです。しかし、殴る蹴る、暴言をはくといった明らかな虐待行為でなくても、日常に潜むマルトリートメントによって子どもの脳とこころは確実に傷ついていきます。

たとえば、子どもの前で激しい夫婦げんかをしたり、長時間しかり続けたり、事あるごとにきょうだいや友達と比較してしまったり──。どこの家庭でも見られるこれらの行為が継続され、頻度と強度を増したとき、子どもの脳はこの苦しみを回避しようとするかのように、自ら形を変えてしまうのです。以下は、マルトリートメントによる影響の一例です。

● 子どもの目の前での激しいけんか(面前DV) → 視覚野が萎縮
●「 しつけ」と称した激しい体罰 → 前頭前野が萎縮
● 人格や存在を否定するような暴言 → 聴覚野が肥大

じつは、子どもの脳は部位ごとにダメージを受けやすい年齢(感受性期)が存在します。この時期に激しく傷ついてしまった脳は、本来の機能をきちんと果たさなくなり、結果的に学習欲の低下や非行、こころの病をまねく可能性が指摘されています。

こうした研究結果をハーバード大学との共同研究により導き出したのは、福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授です。友田氏はマルトリートメントで傷つく子どもがいなくなるよう、日本全国を飛び回り啓蒙活動に努めるとともに、実際に傷ついた子どもの治療や保護者のサポートにあたっています。

友田氏の研究内容はメディアから注目を浴び、日本テレビ「世界一受けたい授業」、NHK「クローズアップ現代+」などに出演。マルトリートメントの危険性は驚きをもって多くの新聞・雑誌で取り上げられました。また、活動内容や人となりは朝日新聞「フロントランナー」、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」などでも紹介され、大きな反響を呼びました。

友田氏の著作『子どもの脳を傷つける親たち』には、研究者としての科学的知見だけでなく、日々、懸命に子育てと向き合う親たちへのエールがたっぷり詰め込まれています。